月影の入り江に眠る罪と愛

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官能小説
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第十一章 潜む組織

アキラの情報収集の結果、闇取引らしき組織の姿が少しずつ浮かび上がってきた。地元の倉庫や岸壁に深夜トラックが出入りしている、漁協関係者の中に不審な動きをする者がいる――いずれも噂レベルの話だが、すべてが「月影の入り江」に通じているように感じられる。  一方で、町の古い住民の一人が、こっそりミサキに囁いた。 「昔からこの岬では、金にならない船を闇で処分したり、乗組員が神隠しに遭ったりするんだよ。警察も本腰を入れない。話を知ってる年寄りはもう数えるほどしかいないさ」  その言葉が、アキラの弟の失踪と重なってしまい、ますます胸がざわつく。  夜、ミサキが灯台の見回りを終えた頃、アキラが宿直室へ駆けこんでくる。 「倉庫の周辺で妙な動きがある。どうも今夜、荷物を船に積み出すらしい。もしかすると、組織の本格的な動きかも……」 「本当……? どうする?」 「密かに様子を探って証拠を掴みたい。警察に通報できる決定的なものをね」  アキラの瞳には焦燥と怒り、そして危うい希望が入り混じっていた。弟がそこで何らかの取引に巻き込まれたなら、いま自分が行かなければ真相は掴めないかもしれない。  ミサキは胸の鼓動を抑えきれないまま、懐中電灯と最低限の荷物を用意する。灯台守として、危険を冒すことは許されないかもしれない。しかし、彼女の心は既にこの男と運命を共にすると決めていた。


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