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官能小説翌朝、ミサキは早めに目を覚まし、灯台のトップに上がって空模様を確かめた。薄雲が海面を覆い、遠くの水平線は霞がかかっている。今日も船舶の安全を確保しなければと、いつものように業務に意識を向けようとするが、どうしてもアキラのことが頭から離れない。 ここは観光地でありながら、裏にはいまだ密輸や闇取引の影が根付いている。弟の失踪も、その闇と繋がっているかもしれない。もしそうなら、自分が灯台守として安全を見守ってきたこの海は、一体何を照らしてきたのか――そんな疑念が募っていく。 ミサキは真面目で責任感が強い。過去の傷を抱えながらも、ここで生き直そうと決意してきた。だが、アキラの出現が彼女の心を大きく揺るがせている。彼の弟を助けたいという気持ちと、灯台を守る者として町全体の安全を守りたいという使命が、彼女の中で一つになりつつあった。 階段を降りると、アキラはもう起きていた。深夜まで調べ物をしていたというのに、彼の瞳に疲労感は見られない。むしろ決意に満ちた光を帯びていた。 「ミサキ、改めてありがとう。君がいなければ、俺はここまで踏み込むことはできなかった」 「私も、あなたと出会わなければ、町の闇に目を向けることはなかったと思う」 形はどうあれ、二人の運命はもはや絡み合ってしまった。それが光なのか闇なのか、見極めるのはまだ先の話だ。