ステラリフトの鍵
ジャンル：
SF
第六章：裏切りの果て
翌朝、彼らは廃棄区画にある廃墟の一角に身を隠していた。ミユは疲れ果てた表情で座り込み、シンイチとユウキは次の行動を話し合っていた。 「このままじゃ逃げ切れない。」ユウキが言う。「エージェントたちは俺たちを追い詰めるだけだ。」 「それは分かっている。」シンイチは静かに答えた。「だが、ミユの体内にあるナノマシンの秘密を解明しない限り、根本的な解決はない。」 その時、外から物音が聞こえた。シンイチが静かに近づき、物陰から様子を窺うと、一人の男が立っていた。それは、かつての仲間であり、現在はエージェント側に寝返った男、タケシだった。 「久しぶりだな、シンイチ。」タケシは不敵な笑みを浮かべた。「逃げ回るのはもうやめろ。お前も分かっているはずだ、この状況がどれだけ無駄なものか。」 「お前がここにいる理由を教えろ。」シンイチは冷たい声で問いかけた。 「理由？ お前を説得しに来たんだよ。ミユを引き渡せ。そうすれば、これ以上の被害は出ない。」 シンイチは一瞬言葉を失った。タケシは彼のかつての友人であり、幾多の危機を共に乗り越えてきた相手だった。その彼が、今は敵として立ちはだかっている。 「お前がどう言おうと、俺たちは諦めない。」シンイチの決意に満ちた声に、タケシの笑みが消えた。「ならば、力ずくで行くまでだ。」 タケシが合図を送ると同時に、エージェントたちが廃墟を取り囲んだ。銃声が激しく響き渡り、崩れかけた壁から瓦礫が降り注ぐ。閃光弾が炸裂し、廃墟の中は混乱の渦と化した。シンイチは素早く隠れながら、ピストルを手に反撃を試みたが、エージェントたちの装備の精度に圧倒されていた。一方、ユウキは手製のEMPグレネードを投げ込み、一瞬だけ敵の攻撃を鈍らせたが、それも時間稼ぎに過ぎなかった。次第に包囲網が狭まり、追い詰められるシンイチたちの息遣いが荒くなっていった。 「ここまでか…」シンイチがそう呟いた瞬間、ミユが前に出た。彼女の目は決意に満ちていた。その決意の裏には、これまで抱えてきた恐れと孤独があった。誰も助けてくれない、自分がこの力をコントロールするしかないという現実を彼女は受け入れていた。「私が行くべきなのかもしれない。」その声には、ほんのわずかに震えが混じっていたが、彼女の決意を揺るがすものではなかった。 その言葉にシンイチとユウキは驚き、そして迷いが生じた。しかし、ミユの中には自分が抱える秘密がもたらす影響の大きさを理解している冷静さがあった。 激しい戦闘の中、彼らは選択を迫られていた。それは、ミユの命と引き換えにステラリフトの力を封印するか、それとも未知の未来に賭けて力を解放するかという究極の選択だった。そして、その選択が彼らの運命を大きく左右することになる。
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