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SFニュートラルゾーンの闇を駆け抜けるシンイチ、ミユ、そしてユウキ。隠れ家がエージェントたちに発見された今、彼らには逃げる以外の選択肢はなかった。 「この先だ!」ユウキが古びた地図を頼りに進む。地下トンネルがニュートラルゾーンの外縁へと繋がっているという情報を持っていた。トンネル内は暗く、ひんやりとした空気が流れている。遠くで滴る水音が反響し、不気味な静寂の中にわずかな命の気配を感じさせた。だが、それ以上に、後方から聞こえる複数の足音が次第に大きくなる恐怖が、彼らの心を冷やしていた。その足音には規則性があり、追手たちの冷徹さを物語っていた。 「あと少しの辛抱だ。」シンイチがミユに声をかける。ミユは額に汗を浮かべながらもうなずいた。しかし、その言葉とは裏腹に、エージェントたちの足音は近づいていた。 突然、背後から銃声が響いた。弾丸が壁に当たり、火花を散らす。「走れ!」シンイチが叫び、3人は一斉に走り出した。暗闇の中、出口を探して駆け抜ける。 やがて彼らは、朽ち果てたドアの前にたどり着いた。ユウキが素早く端末を取り出し、電子ロックを解除する。「早く入れ!」彼が叫ぶと同時に、ドアが音を立てて開いた。 外に出た先は、ニュートラルゾーンの廃棄区画だった。巨大な廃材が山積みになり、建物の残骸が連なる荒れ果てた場所。彼らは息を切らしながらも、一時的に追手を振り切ることに成功した。 「次はどうする?」ミユが不安げに尋ねる。シンイチは答えないまま、夜空を見上げた。彼の心には葛藤が渦巻いていた。逃げ続けることへの不安、追手に立ち向かう覚悟、そしてミユを守らなければならない責任。そのすべてが重くのしかかっていた。星々の輝きが、彼らの行く手を暗示しているかのようだったが、シンイチにはその未来が希望なのか、それともさらなる苦難なのか、見極めることができなかった。