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日常和樹が麗子に触れたその瞬間、全てが変わった。理性が崩れ去り、欲望だけが支配する世界に足を踏み入れた。麗子の肌は温かく、柔らかく、触れたことでその感触が和樹の体を駆け巡る。彼女は一瞬、目を閉じ、深く息を吸い込んだ。その瞬間の静寂が、二人の間に漂っていた全ての緊張感を凝縮したように感じられた。 「もう後戻りはできないわよ。」麗子の低い声が和樹の耳に響く。その声には警告とともに、無言の誘惑が混じっていた。 和樹は、何も言わずにただ彼女を見つめた。彼女の目の中には何か冷徹で暗いものが潜んでいて、和樹はその目を見つめながら、彼女が抱えている秘密を少しずつ解き明かしていきたいという欲望を抑えきれなかった。だが、麗子はその瞬間に冷たく微笑み、和樹を突き放すように一歩後ろに下がった。 「あなたはまだ私のことを何も知らない。」麗子の言葉が、和樹の胸に強く突き刺さった。「私が持っているもの、あなたが知らなければならないこと。それを知ってから、あなたがどうしたいか決めればいい。」 和樹は一歩も動けなかった。その言葉が彼の心を動かし、無意識に彼女に求められていることを理解した。そして、その言葉がまた一歩、彼を深みへと誘っていることを自覚していた。 「何も知らない。」和樹はつぶやくように言った。「でも、知りたい。」 「それなら、覚悟を決めなさい。」麗子はそのまま、和樹の目をじっと見つめた。「私があなたに何をさせるか、あなたが覚悟を決めなければならない。」 その言葉に、和樹は心の中で確信を持った。彼女が抱えている闇を知り、その闇の中で彼自身も消えていくような感覚。欲望が彼を支配していた。だが、和樹はその支配から逃れることなく、ただ麗子の指示を待った。 麗子は静かに立ち上がり、和樹を見下ろすようにして言った。「今夜、私と一緒に来なさい。あなたが覚悟を決める時よ。」 その言葉に和樹は再び動けなくなった。だが、その一言が彼を決定的に動かした。麗子が指し示す方向には、何か大きなものが待っている、そして和樹はそれを見届けなければならないような強迫感に駆られていた。 和樹は麗子の後を追い、カフェを出た。街の灯りがぼんやりと照らす中、二人は静かに歩いていった。麗子は何も言わずに歩き、和樹も黙ってその後を追った。その静かな夜の中で、和樹の胸の中には答えのない不安が渦巻いていたが、それと同時に、麗子が導く先に何が待っているのかを知りたくて仕方なかった。 やがて、二人は繁華街を外れた辺りにある古びたビルの前に立った。麗子は扉を開け、中に入っていく。和樹も迷うことなくその後に続いた。 ビルの中に入ると、薄暗い廊下が続いている。そこは人がほとんどいないようで、静寂だけが広がっていた。麗子は和樹に振り返り、そして無言で奥へと進んでいく。 「ここは…?」和樹が声をかけると、麗子はふっと笑みを浮かべた。 「ここには、私が守ってきた秘密があるの。」麗子はそう言って、扉を開けた。中に入ると、和樹は一瞬目を見張った。部屋の中には様々な道具が並べられ、どこか不気味な空気が漂っていた。 「ここが、私の世界。」麗子は低い声で言った。「あなたが私に触れる覚悟を決めたなら、ここから先に進むことになる。」 その瞬間、和樹の胸に圧倒的な感情が押し寄せた。好奇心、欲望、そして恐れ。それらが交錯し、和樹はその先に進むべきかどうか迷っていた。しかし、麗子の目を見ると、彼女の中にある冷徹な決意を感じ取ることができた。 「私はもう後戻りしない。」和樹は静かに言った。 麗子は少しだけ微笑んだ。「なら、始めましょう。」