星屑の調律者

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SF
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第四章: 銀河の裂け目

アツシとナナの旅は、ティリスの隠れ家を出発するところから始まった。二人が目指すのは、宇宙の奥深くに存在する伝説の「銀河の裂け目」と呼ばれる場所だった。それは、宇宙のバランスが最も不安定になっている領域だとナナは説明した。 「銀河の裂け目には、あなたの記憶を取り戻す手がかりがある。」 アツシはナナの言葉に疑念を抱きつつも、彼女の強い意志に押されるように旅立った。古びた宇宙船「ノクターン号」は、ナナが長年隠れ家で修理していたものだった。船内は簡素だが、必要な装備が整っていた。 「この船、本当に飛べるのか?」 アツシが半信半疑で尋ねると、ナナは軽く微笑んで答えた。 「私が保証するわ。何年もこれを修理してきたんだから。」 宇宙船が発進すると、ティリスの荒涼とした風景が徐々に遠ざかっていった。アツシは窓の外に広がる無限の星空を見つめながら、これまでの人生では感じたことのない感覚を味わっていた。 「俺が本当に調律者だとしたら…何をすればいいんだろう。」 ナナは操縦席に座りながら答えた。 「まずは、自分自身を知ること。そして、この宇宙の真実を見極めること。」 旅の途中、ノクターン号は突然、激しい振動に見舞われた。外部センサーが警報を発し、ナナの表情が険しくなる。 「何かが近づいてくる。」 アツシは驚きつつも、船内のスクリーンに映し出された映像に目を凝らした。そこには、巨大な漆黒の艦船が映っていた。それは、宇宙の均衡を乱そうとする勢力「暗黒の星」が操る艦隊の一部だった。艦船の中央部には奇妙な紋章が刻まれており、それを見たナナの表情が一瞬だけ険しくなった。「あの紋章…どこかで見たことがある…」と彼女は呟いた。 「追手か?」 ナナは冷静に頷いた。「ええ、準備して。戦わなければならない。」 アツシは戸惑いつつも、ナナの指示に従い、初めて触れる武器システムの操作に取り掛かった。彼の手が緊張で震える中、ナナは静かに言った。 「大丈夫。あなたならできる。」 ノクターン号が緊迫した戦闘態勢に入る中、アツシの中に再び何かが目覚め始めていた。それは、自分の中に眠る調律者としての力の片鱗だった。


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