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SF目が覚めたとき、アツシは見慣れない場所にいた。粗末だが清潔な室内。壁には奇妙な模様が刻まれており、窓の外には見たことのない植物が生い茂っていた。どうやらここはティリスのどこかではないらしい。 「ここは…?」 彼が起き上がろうとすると、頭に鈍い痛みが走った。同時に、ナナの声が聞こえてきた。 「無理をしないで。」 振り返ると、ナナが部屋の隅に立っていた。彼女は何か端末のようなものを操作している。 「君が…俺をここに連れてきたのか?」 ナナは頷き、端末を閉じて彼の方に近づいてきた。 「ここは私の隠れ家。あなたを保護するために連れてきたの。」 アツシは警戒の眼差しを向けた。「保護?俺に何が起きているんだ?」 ナナは一瞬躊躇した後、真剣な表情で答えた。 「あなたは普通の人間ではない。あなたの中には特別な力が眠っている。それは調律者としての力。」 「調律者…?」 「そう。この宇宙を均衡に保つ存在。それが今、崩れようとしている。」 ナナは視線を窓の外に向けた。遠くに見える夜空は美しい星々に満ちていたが、その中にわずかな歪みが生じているのがわかった。その歪みは、銀河の裂け目に繋がる道を示しているように思えた。 「宇宙が…崩れる?」 「ええ。あなたが目覚めなければ、全てが失われる。」 アツシは頭を抱えた。突然、彼に押し付けられた現実に耐えきれなかった。しかし、ナナの目に宿る真剣さが、彼を引き止めていた。 「俺に何ができる?」 その問いに、ナナはわずかに微笑み、静かに答えた。 「それをこれから一緒に見つけていきましょう。」 彼女の手がそっと彼の肩に触れた。その瞬間、アツシの中にかすかな光が灯るのを感じた。それは、自分が知り得なかった新たな可能性への扉のように思えた。