星屑の調律者

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SF
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第三章: 調律者の真実

ナナが語った話は、アツシの想像を遥かに超えていた。彼女は、かつて同じように選ばれた調律者たちが銀河の裂け目に記録を残した可能性を語り、それが重要な鍵となることを示唆した。宇宙には無数の惑星と生命が存在し、それらは互いに見えない糸で繋がれ、微妙なバランスで成り立っているという。そして、バランスが崩れた先には、滅びと混沌しか待っていないのだ。そしてそのバランスが崩れれば、星々は混沌に飲み込まれ、永遠に秩序を失う運命にあるというのだ。ナナの言葉は平静を装いながらも、その奥に込められた焦燥が伝わってきた。そのバランスを保つために、数千年前に「調律者」と呼ばれる存在が作り出されたという。 「調律者は、宇宙の秩序を保つために選ばれた存在。でも、すべての調律者がその役割を全うできたわけではない。」 ナナはアツシの前に座り、古びたホログラムを投影した。そこには、巨大な星図と、無数の点で示された調律者の記録が浮かび上がった。 「あなたはその中でも特別な存在。バランスを回復する力を持つ、最後の調律者。」 「でも俺には、そんな力なんて感じられない。ただの鉱夫だ。」 ナナは首を振り、彼の手を取りながら言った。 「まだ目覚めていないだけ。でも、その力があなたの中で静かに脈打っているのを感じるわ。それに…あなたが失った記憶の中に、その理由が隠されている。」それを引き出すには、あなた自身が自分の過去と向き合う必要があるの。」ナナの声はどこか切迫していたが、その奥にはわずかに希望の光が宿っていた。彼女の瞳は揺るぎない意志を映し出し、アツシの心を静かに揺さぶった。 アツシは戸惑いながらも、その言葉に耳を傾けた。ナナの言葉は嘘ではないと感じたからだ。しかし、自分が宇宙の秩序を守る存在だという事実を、まだ完全に受け入れることはできなかった。 「どうすれば、その力を目覚めさせられる?」 ナナは一瞬沈黙し、そして真剣な表情で答えた。 「まずは、あなたの記憶を取り戻すこと。その中に、力を目覚めさせる鍵が隠されている。」 アツシは息を呑んだ。自分の過去に何が隠されているのか。その答えを見つけるために、彼はナナと共に未知の旅へと踏み出す決意を固めた。 窓の外の星空には、一筋の光が流れ、宇宙の深淵が二人を待ち受けているかのようだった。


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