潮騒のレゾナンス

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ミステリー
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第2章:防波堤の旋律

潮見崎に到着してから数日が経ち、篠原航は毎晩の散歩を楽しむために防波堤を訪れる習慣がついていた。防波堤からは青く広がる海と、遠くに連なる山々の雄大な風景が一望でき、波の音が心地よく響いていた。航にとってこの場所は、東京では得られない静けさと自然の息吹を感じる特別な場所となっていた。 ある満月の夜、航はいつものように防波堤を歩いていた。月明かりが海面に反射し、銀色に輝く波が穏やかに打ち寄せている。潮風が心地よく吹き抜ける中、彼は耳を澄ませて周囲の音に耳を傾けていた。通常の潮の音や波のさざめきに加えて、どこからかかすかな旋律が聞こえてくることに気づいた。 その音は自然の音とは思えないほど繊細で、まるで誰かが楽器を奏でているかのようだった。時折、人の声のようにも聞こえるその旋律は、潮見崎の夜に不思議な魔法をかけるかのように、航の心に深く響き渡った。彼はその音に強く惹かれ、立ち止まって耳を澄ませた。 「これは一体…」 航は疑問を抱きながらも、興味を抑えきれずに録音機器を取り出した。最新の音響機器を活用し、旋律の源を特定しようと試みた。しかし、解析を進めるうちに、音の正体を掴むことは難しいと感じ始めた。録音された音は複雑で、自然の音と人の声が混ざり合ったような独特のものであった。 「普通の音ではないな…」 航は自分の頭の中で考えを巡らせながら、再度その場所に足を運ぶことを決意した。何度も防波堤を訪れ、同じように旋律を探し続けたが、毎回微かにしか聞こえず、明確なパターンを掴むことはできなかった。それでも、彼の探求心は衰えることなく、旋律の背後にある秘密を解き明かそうと努力を続けた。 数週間が経ち、航は旋律の音に関するデータを集めることに成功した。音のパターンや波の動きとの関連性を分析し始めたが、依然として明確な答えは見つからなかった。そんな中、彼はふと夏海の話を思い出した。夏海が語った「海鳴石」の伝説と、この謎の音が関係しているのではないかという疑念が頭をよぎった。 「もしかすると、海鳴石と関係があるのかもしれない…」 航は再び夏海にそのことを尋ねることにした。翌日、民宿で再会した夏海に自分が発見したことを話すと、彼女は少し驚いた表情を浮かべながらも、真剣な眼差しで航を見つめた。 「海鳴石の話をもっと聞きたいと思っていたんです。もし関係があるなら、私たちの探求が実を結ぶかもしれませんね。」 夏海の言葉に背中を押され、二人は改めて海鳴石の謎に挑む決意を固めた。防波堤で聞こえる旋律の正体を突き止めるため、そして潮見崎に隠された真実を明らかにするために、彼らの冒険は新たな段階へと進み始めた。


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