タイムホライゾンの囚人

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SF
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短編小説:タイムホライゾンの囚人

プロローグ 2085年、タイムトラベル技術「タイムホライゾン」が人類によって開発された。それは過去への干渉を可能にする一方で、犯罪の温床ともなった。歴史の修正を目論む犯罪者たちの出現により、未来は破綻の危機に瀕していた。 政府は対策として「時間管理局(Time Regulation Bureau)」を設立。時間の秩序を守るため、違法タイムトラベラーを追跡し捕らえる特別部隊を編成。その中でも敏腕エージェントとして名を馳せるのが、リュウ・カサハラだった。 第一章: 過去からの来訪者 「ターゲット確認。現在地点は1972年、東京。過去改変の兆候なし。」 ヘッドセット越しに聞こえる相棒アナリストの声。リュウは路地裏に潜み、ターゲットの動きを監視していた。だが、突然、異変が起きる。通信が途切れ、辺りの景色が歪む。瞬きする間もなく、目の前に一人の少女が現れた。 「あなたがリュウ・カサハラ?」 少女の声は冷静で、まるで彼がここに来ることを知っていたかのようだった。 「そうだが……お前は誰だ?」 「私はカナ。2165年から来た。あなたを助けるために。」 リュウは動揺を隠せなかった。タイムホライゾンは理論上、未来から過去への移動しか許さない技術だった。しかし、この少女の存在はその前提を覆していた。 第二章: 未来の真実 「2165年、人類は滅びる。その原因は、あなたが犯す“選択”にある。」 カナの言葉にリュウは困惑した。エージェントとして、彼は数多くの過去改変を阻止してきたが、自分が未来を壊す原因になるとは想像もしていなかった。 「君は一体、何を言っている?」 カナは手のひらから小型のホログラムを投影した。そこには崩壊した未来の映像が映し出されていた。瓦礫の中で泣き叫ぶ人々、黒煙に覆われた都市。そしてその中に立つ一人の男――リュウ自身だった。 「あなたが上司の命令に従い、ある人物を捕らえる。その瞬間、タイムラインが崩壊するの。」 「その人物とは?」 カナが告げた名前を聞いた瞬間、リュウの心臓が凍りついた。それは彼の上司であり、時間管理局の創設者だった。 第三章: 運命の選択 カナの話は疑念を呼ぶ一方で、無視できない説得力があった。だが時間管理局のルールは厳格で、タイムトラベラーを保護することは許されない。即時拘束しなければ、彼自身が反逆者となる。 「もし君の言う通りなら、どうすればいい?俺が上司を裏切れというのか?」 「そう。未来を救うためには、それしかない。」 カナの声は迷いのないものだった。 その時、リュウのヘッドセットに緊急通信が入った。「リュウ、直ちにターゲットを確保しろ。過去から来た少女だ。」 視線をカナに向けると、彼女の瞳には決意が宿っていた。 最終章: タイムラインの行方 時間管理局の追跡部隊が迫る中、リュウは銃を握りしめた。彼の中で、エージェントとしての忠誠心と人類の未来を守る大義がせめぎ合っていた。 「選ぶのよ、リュウ!」カナの叫び声が響く。 リュウは迷いながらも、彼女を背後にかばい、追跡部隊に銃口を向けた。その瞬間、時間の流れが変わる音が聞こえたかのようだった。 「俺はルールを破る。」 リュウはカナを連れ、共に逃げる道を選んだ。 エピローグ リュウとカナはその後、タイムホライゾンの秘密を暴き、人類の未来を守るために戦い続けた。だが、未来が完全に安定する日はまだ遠い。彼らの選択が正しかったのか、その答えを知る者は誰もいない。ただ一つ確かなのは――彼らが運命に抗い、時間の檻を超えたということだ。


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