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官能小説著者:
語りの灯火
月明かりが部屋を薄く照らす中、アヤはグラスを片手に窓の外を眺めていた。波の音が遠くから聞こえる。彼女の心臓は、不思議な高鳴りを見せている。
コンコン。
静かなノックの音にアヤは振り向いた。開かれた扉の向こうに立っていたのは、スーツ姿の男。無造作に外したネクタイが首元に残り、その鋭い目がアヤをじっと見つめている。
「シンジさんね?」アヤは微笑みながら声をかけた。
「そうだ。遅れてすまない。」
彼の声は低く、どこか危険な響きを持っていた。
シンジが部屋に入ると、彼女はその雰囲気に一瞬息をのむ。まるで、目の前の空気が熱を帯びたかのようだった。アヤはグラスをテーブルに置き、ゆっくりと歩み寄る。
「緊張してる?」彼女が尋ねる。
「いや、むしろ期待している。」
彼の言葉には裏表がなかった。目の前の女性に、全てを奪われる準備ができているかのようだ。
アヤはシンジの胸元にそっと手を伸ばした。滑らかなシャツの感触が指先に伝わる。「あなた、こういうのに慣れてるんでしょ?」
シンジは笑みを浮かべ、アヤの手をそっと取り、彼女の腰に触れた。「慣れているかどうか、試してみるか?」
その瞬間、二人の距離は一気に縮まった。彼女の唇が彼の耳元に近づき、かすかな囁きが彼を包む。「あなたが満足できるか、見てみるわ。」
二人はベッドに倒れ込むと同時に、情熱が爆発するように絡み合った。アヤの指先が彼の背中をなぞり、シンジの唇が彼女の首筋に触れる。彼の手が彼女のドレスを引き下ろすたびに、月明かりが二人の影をなぞっていく。
「こんなにも…強く惹かれるなんて。」シンジが低くつぶやいた。
アヤは彼の言葉を遮るように彼の唇に触れ、「言葉は要らないわ。ただ、感じて。」
夜が更ける頃、二人はベッドに横たわり、静寂の中に包まれていた。窓から差し込む月光が彼らの身体を優しく照らしている。
「あなたの本当の目的は何?」アヤが囁く。
シンジは目を閉じ、わずかに笑みを浮かべる。「ただ、君に会いたかった。それだけだ。」
彼の言葉に、アヤは少しだけ目を見開き、そして静かに微笑んだ。まるで、この夜が永遠に続くかのように、二人は再び身を寄せ合った。