連載マンガ家になりたくて。

著者:

語りの灯火

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第一話 ── 白紙の未来、描かれる夢(完結)

机の上には、真っ白なスケッチブックと、何本もの削られた鉛筆が転がっていた。机の隅には、半分乾いたコーヒーのカップ。時計の針は午前三時を指している。

 俺、**佐倉颯太(さくら そうた)**は、連載マンガ家を目指している。

 今はまだ、高校三年生。卒業を目前にして、進路指導では「安定した職に就いた方がいい」と担任に言われたばかりだ。だが、そんなものには興味がなかった。俺の頭の中には、マンガのことでいっぱいだったから。

「くそ……またダメか」

 描いたページをめくり、ため息をつく。

 人物の動きが硬い。ストーリーの展開が冗長すぎる。何より、読み手を引き込む魅力が足りない。何度もプロットを練り直し、何度もネームを描き直す。でも、納得のいくものが一つもない。

「やっぱり俺には才能がないのか……」

 その言葉を吐き出した瞬間、背中に寒気が走る。

 諦めるなんて絶対に嫌だ。でも、どんなに頑張っても結果が出ない現実に、心が折れそうになる。

 そんなとき、スマホが振動した。

 画面を見ると、SNSのDMに一通のメッセージが届いていた。

──「あなたのマンガ、すごく面白いですね!もっと続きを読みたいです!」

 一瞬、目を疑った。

 送り主は知らない人だった。プロフィールを見ても、特に有名な人ではなさそうだ。でも、このたった一行のメッセージが、心の中の暗雲を吹き飛ばすような気がした。

 俺のマンガを読んでくれる人がいる。

 たった一人でも、「面白い」と言ってくれる人がいる。

 それなら、俺はまだ描ける──そう思えた。

「……よし、もう一回やってみるか」

 消しゴムを手に取り、描き直す。

 キャラクターの表情、動き、セリフ、全てを見直しながら、少しずつ物語が形になっていく。眠気なんて吹き飛んでいた。今の俺の頭の中には、ただマンガを描くことだけが詰まっている。

 数日後、俺は意を決して新人賞の応募ボタンを押した。

 描き上げた32ページの読み切り。

 これが、俺の今の全力だった。

「頼む……!」

 祈るようにスマホを握りしめる。

 結果が出るまでには、しばらく時間がかかるだろう。だけど、その間も俺は手を止めない。次の作品を描き始める。それが、マンガ家になるということだから。

 ──道はまだ遠い。けれど、俺は絶対に諦めない。

 マンガ家になるために。

(完)


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