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異世界転生プロローグ 「クソッ……こんなところで……!」 男は最後の力を振り絞り、膝をついた。周囲には無数の銃弾が降り注ぎ、仲間たちの叫びがこだました。ブラック企業に勤め、何の希望もない日々を過ごしていた俺——**藤崎 亮(ふじさき りょう)**は、ようやく掴んだ自由の中で、理不尽な裏切りに遭い、ここで人生の幕を閉じるはずだった。 視界が暗転する——その瞬間、雷鳴のような轟音が鳴り響いた。 第一章:角の目覚め 「ムォォォォォォォ……ッ!」 突然、獣のような咆哮が喉から溢れ出る。全身が熱く、力が漲っていた。目を開けると、そこは見たこともない大草原。身体を起こそうとするが、異様な違和感が全身を襲う。 「……な、なんだこれ……!?」 俺は人間ではなかった。筋肉質な四肢、分厚い毛皮、そして頭には二本の巨大な角——そう、俺はバッファローに転生していたのだ。 周囲には同じようなバッファローたちが群れをなし、穏やかな表情で草を食んでいる。 「おい、新入りか?」 気づけば、一頭の大きなバッファローがこちらを見下ろしていた。毛並みは黒々とし、鋭い目つきをした堂々たる個体だ。 「……新入り?」 「そうだ。見たところ、お前は『外れ者』か?」 「外れ者?」 「異世界からの転生者のことさ。時々、妙な奴が生まれてくるんだよ。まあ、心配するな。俺たちはバッファローの群れだ。お前も今日から仲間だぜ」 どうやら俺は、異世界に転生しただけでなく、この世界では「異端者」として見なされる存在らしい。 第二章:バッファローの戦い この世界では、草食動物であるバッファローも単なる草食動物ではなかった。彼らは巨大な魔獣や人間の軍勢と戦い、群れを守る誇り高き戦士だったのだ。 俺が転生した群れは、「黒雷の牙(くろいかずちのきば)」と呼ばれる精鋭部隊。彼らは、獰猛なライオン型の魔獣「サーベルレオン」や、略奪を繰り返す人間の騎馬隊「鉄蹄の軍勢」と戦いながら、大草原を支配していた。 「藤崎、お前の角には『雷の加護』が宿っている」 群れの長であるバッファロー・ガルザが言った。 「雷の……加護?」 「そうだ。転生者の中には、特別な能力を持つ者がいる。お前の角には雷の力が宿っており、それを使えば敵を一撃で貫くことができるはずだ」 試しに角を振ると、空気がビリビリと震え、青白い雷が弾けた。 「すげぇ……!」 これは、戦える。人間だった頃の無力さとは違う。 バッファローとして、この大地で生きる。 そう決意した俺に、すぐさま試練が訪れた——。 第三章:鉄蹄の襲撃 「警報だ!鉄蹄の軍勢が攻めてくる!」 遠くから響く地響きのような音。それは無数の馬蹄が草原を叩きつける音だった。人間の騎士たちが、槍を構えながらこちらへ迫ってくる。 「藤崎、お前の雷の力、見せてみろ!」 ガルザの号令と共に、俺は前に出る。敵の槍が目前に迫る——その瞬間、俺は思い切り角を突き出した。 「オオォォォォォッ!!」 雷鳴が轟き、俺の角から青白い稲妻が迸る。瞬く間に最前列の騎士たちが感電し、馬ごと地面に倒れ込んだ。 「やれる……!俺はやれるぞ!!」 こうして、俺の異世界バッファローとしての戦いが幕を開けた——。 エピローグ 「藤崎、お前は今日から『雷角(らいかく)の勇士』だ」 戦いの後、ガルザが俺の角に装飾を施し、誇り高き戦士の証を授けた。 俺はもう、人間ではない。けれど、ここには仲間がいる。俺には、戦う理由がある。 異世界バッファロー戦記——角の誇りを胸に、俺はこの大草原を駆け抜ける。