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日常1. 離れ離れの家族 「お母さん、本当に行っちゃうの?」 小さな声でそう聞いたのは、7歳のユウタだった。 リビングのテーブルには、空港行きのバスのチケットが置かれている。母のリカは、その視線を追いながらも、優しく微笑んだ。 「お仕事だからね。でも、すぐに帰ってくるから大丈夫よ。」 リカは海外でのプロジェクトに参加することになり、半年間日本を離れることになった。夫のタカシとユウタは、日本で留守番をする。 「本当に寂しくない?」 ユウタの目には涙がにじんでいた。 「寂しいよ。でも、お母さんが頑張ってるって思ったら、僕も頑張る。」 「……そうね、お母さんも頑張るから、ユウタもお父さんと一緒に、いい子で待っててね。」 そう言ってリカはユウタを抱きしめた。タカシもそっと肩に手を置く。 「ユウタ、お母さんを笑顔で送り出してやろうな。」 その夜、3人は夜空を見上げた。星がきらめいている。 「星を見れば、お母さんを思い出すんだよ。」 リカはそう言い残し、旅立っていった。 2. 小さな家族の挑戦 リカが海外に行ってから、ユウタとタカシは二人きりの生活を送ることになった。タカシは仕事と家事の両立に悪戦苦闘しながらも、ユウタのために一生懸命だった。 「お父さん、今日のごはんはなに?」 「今日はカレーだぞ!」 「えっ、レトルトじゃないよね?」 「……もちろん手作りだ。」 ユウタは少し疑いの目を向けたが、お父さんの努力を認めることにした。 夜になると、二人はベランダに出て空を見上げた。 「お母さん、頑張ってるかな?」 「きっとな。星もきれいだし、ユウタがちゃんとやってるって伝わるさ。」 家族が離れていても、同じ空を見上げることでつながっている気がした。 3. 再会の夜 半年後、ようやくリカが帰国する日がやってきた。空港でユウタは緊張しながらお母さんを待っていた。 そして、到着ゲートから現れたリカの姿を見つけた瞬間、ユウタは駆け出した。 「お母さん!!」 「ユウタ!」 抱きしめ合う二人。タカシもそっと笑みを浮かべる。 「おかえり。」 「ただいま。」 夜、3人で食卓を囲みながら、リカはユウタの成長に驚いた。 「ユウタ、ちょっと背が伸びたんじゃない?」 「えへへ、ちゃんと牛乳飲んでたよ。」 「お父さんも頑張ってたしな。」 タカシは照れくさそうに頭をかいた。 その夜、久しぶりに3人で夜空を見上げた。 「また、こうやって一緒に星を見れるね。」 「うん、家族みんなで。」 夜空に星がまたたく。遠く離れていても、心はずっとつながっていた。 リカはそっと手を握り、そばにいる家族のぬくもりを感じた。